米国T社では、すでに人工衛星を利用したサービス情報ネットワークを全米に展開していたが、マルエフには、このシステムでは十分でないディーラーでの修理現場と、米国T社のサービス本部との間でリアルタイムの情報交換が必要だという意見が、大勢を占めた。
それも言葉や文字だけでなく、もっとビジュアルな情報、できれば動画面を活用した2方向の情報のやり取りが必要だった。
しかし、当時はまだ、衛星を利用した動画面を含んだ放送装置は、一般用としては市場に出回っていなかった。
今でこそ当たり前になった画像の圧縮技術がまだ確立していなかったのだ。
しかし、もしこの双方向のシステムが実現し活用できれば、クレーム処理にも、部品や車両の受発注や在庫管理などにも活用できる、画期的な情報システムになることは間違いがなかった。
河村の執念マルエフを成功させるには、「マルエフ・ディーラー専用相互情報通信システム」の構想実現が不可避だと考えた米国T社の河村副社長は、東郷社長らの同意を得ると、まず修理書と部品カタログのCD―ROM化から始めた。
ディーラーにあらかじめ検索が容易な部品カタログや修理書のCDーROMが完備されていれば、サービス現場ではそれらを見ながら、サービス本部との間で情報のやり取りをし、不具合を共同で探求できる。
しかも、こうして見つけた不具合の診断と対策方法を米国T社のメインコンピューターに蓄えておけば、他のディーラーも自由に読み取ることができるし、必要に応じて修理書の改定版のCDーROMに取り込むこともできる。
まだどこのメーカーも修理書などのマニュアルのCD化には手を付けていない時代だった。
動画面が送れる技術の開発が間にあうかどうか、コスト的に見合うものかどうか、米国T社社内でも実現を危ぶむ声が出た。
いずれにしろ、このシステムを有効に活用するにはT社本社の協力が必要だった。
米国トョタが、修理害をCD化するには、原稿の段階からCDに適した形の情報を、本社から支給してもらう必要があった。
しかし、当時のT社は、修理書の編集や、製本の大部分の仕事を外注に依存しており、外注先にはCD作成用のノウハウもなかった。
しかも、マルエフ計画に対する、本社と米国T社間の「温度差」もあって、双方の協力態勢は必ずしもスムースなものではなかつた。
「もう迷っている時期ではない」・河村は、カスタマ‐サービス部の幹部を集め、決意を示すとともに構想実現に動き出した。
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